エンティティ・コンプレックス

不思議な出来事、未確認な事柄を考察する

ウィンチェスター・ミステリーハウス

f:id:gummy2:20180429081404j:plain

現在のウィンチェスター・ミステリーハウス。観光地となり、Googleストリートビューにて見ることも出来る。写真はストリートビューから

 

 

アメリカのシリコンバレーは今や、アップルやグーグルなどのIT企業の聖地であり、そのハイテク企業が犇めく中、奇っ怪な屋敷がある事をご存知であろうか?それが「ウィンチェスター・ミステリーハウス」である。

 


事の始まり


 

カルフォルニアサンノゼにある奇っ怪な屋敷は増築を繰り返して、まるで迷路のようになったいた。驚くべきことにその部屋数は160にも及ぶとの事だ。しかもその増築の指示は霊によって行われているとしたら・・・。

 

ウィンチェスターは有名なライフル銃で一財を築いた一族で、そのライフル銃は1866年、オリヴァー・フィッシャー・ウィンチェスターが銃の販売権を取得し、売りまくった。結果その銃は南北戦争から第一次世界大戦まで、合衆国の軍隊に正式採用され、一家は莫大な富を得ることになる。

彼の息子ウィリアムも商才があり、実際にここまで売り込んだのは彼ウィリアムであったという。

そのウィリアムは1862年9月に遠戚であるサラ・バーディーと結婚する事となる。サラは美しい才女であり、4ヶ国語を操り、音楽の才能もあったという。二人が結婚した4年後、再びライフルが売れ、二人はコネティカット州で富豪として暮らすこととなる。

 


呪われた一族


 

ところが、この頃から一族に不幸が訪れるようになる。1866年に出産した女児が、僅か1ヶ月で死亡し、1881年には夫であるウィリアムも肺結核を患いこの世を去ってしまう。

夫を失って2年後、サラはウィンチェスター・ミステリーハウスがあるカルフォルニアサンノゼへ移住する。

その理由は「霊」が導いたからである。

 

1860年頃と言えば、アメリカでは「降霊会」などのスピチュアルブームがあった頃である。心霊がまことしやかに語られ、彼方此方で除霊や降霊が行われていた時代であった。

立て続けに不幸に見舞われたサラ・ウィンチェスターがそういった「降霊会」に救いを求めたとしても、なんら不思議では無かったのだ。

サラは「降霊会」にてサラは警告される事となる。

「ウィンチェスター婦人、あなたは西海岸に赴き、豪華で美しい家を建てなければなりません。昼も夜も、立て続けなければ、あなたは死ぬことになるでしょう」

驚いたサラはその理由を尋ねると、

「あなたの家族が売ったライフルで、多くの人が死にました。その償いとして、霊が求めているのです」

意味不明な要求だが、そもそも霊に常識などあるわけはないし、不幸で沈んでいたサラには十分な説得力があったに違いない。

恐らくサラの心にも武器を売って富を得ることに、罪悪感のようなものがあったのでは無いだろうか。

 

f:id:gummy2:20180429081429j:plain

サラ・ウィンチェスター。wikipediaより

 


意味不明な屋敷


 

サラはサンノゼにて161エーカーほどの農地を買い取った。最初は建物は8部屋しかなかったが、彼女が亡くなる30年後の1921年まで、屋敷は増築を続け、部屋数160、暖炉は47、階段は40、バスルーム13箇所、霊の指示通り造り続けた。

建物の間取りは「霊」の指示で造ったので意味不明な造りとなっており、地図がなければ家の中で迷ってしまうほでであった。

どうやら、最初は霊媒師が媒体して霊の声を聞いていたらしいが、そのうち直接、霊の声を聞き取る事が出来る様になったらしく、その「霊」に従っていたらしい。

霊の要求もやはり意味不明で、正面扉は俗人に使わせるなとか、サラ自身も人に顔を見せるななどの要求があった。(ルーズベルト大統領がこの屋敷に訪れた時も、正面扉からは入れなかった。サラは霊の言う通り、いつも黒いヴェールで顔を隠していた)

部屋の備品も高級品で揃えていたが、13という数字にこだわりがあったのか、階段は13段、天井は13の板、シャンデリアの蝋燭は13灯という具合に13に拘った物の配置を行っていた。

 


観光資源となったミステリーハウス。


 

現代は観光資源として、ツアーが行われており、見学することが出来る。当時の世相を鑑みると、心霊が実しやかに信じられていた事を背景にして、心を病んだ富豪が起こした事ではあるが、自分の資産を利用しているだけで誰にも迷惑を掛けているわけではないので、比較的穏やかな雰囲気があるのではないであろうか。

思うに金持ちが、このような奇行に走ると変に財力がある分、大袈裟な事が起きてしまうのでは無いのであろうか。

日本でも、小金持ちが何らかの啓示を受けて自宅に巨大な仏像を建てたりする事があるが、本質的にはそれと同じことなのであろう。

ウィンチェスター・ミステリーハウスはある富豪の悲しい物語ではあるが、図らずと後世に残る事となったのは、皮肉な事である。

f:id:gummy2:20180429081441j:plain

大通りに面しているミステリーハウス。その異様さは空から見ると一目瞭然だ。